MBAケーススタディ:ジェフ・ベゾスのヒト、モノ、カネ

2019/05/07

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ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)という人を知っていますか。

アマゾン(Amazon)創始者で、2018年Forbes誌発表のThe World’s Billionairesでビル・ゲイツ氏、ウォーレン・バフェット氏を抜いて世界第一位の富豪になった人物です。その資産総額は1,120億ドル(約10兆円)。言うまでもなく世界トップクラスの経営者と言えます。

経営者がビジネスを円滑し進めるために常に目を光らせているのは、ビジネスの資源「ヒト」「モノ」「カネ」の3要素です。

今回、そんな大経営者、ジェフ・ベゾスの「ヒト」「モノ」「カネ」から、彼がどんな人物なのかを見てみましょう。

ジェフ・ペゾスのヒト:優秀な人材を集めまくる

ジェフ・ペゾスはアマゾンに優秀な人材を集めることに注力続けました。
アマゾンの採用面接では「米国内にガソリンスタンドはいくつあるのか?」など、マイクロソフトやマッキンゼーの入社試験で出題されるような厳しい質問をされます。求職者はこのような質問に対して、論理的に回答していかなければなりません。

ジェフ・ペゾス曰く、
「誰かを雇ったらその人を基準に次はもっと優れた人を雇うようにする。そうすれば人的資源が全体的によくなってくる。」

一般的に会社の業績が上がり会社のブランドが付いてくると、より優秀な人材が集まってきます。アマゾンも1994年に創業以来、急激な成長を遂げた新興企業のひとつです。

企業が成長
⇒優秀な人材が集まる
⇒企業がさらに成長
⇒優秀な人材がさらに集まる

そんなサイクルにうまく乗っている、というよりそのようなサイクルを作り出していると言えます。
アマゾンでは50人以上の部下を持つマネージャーは、成果を一番上げていない社員を一人クビにしなければならないそうです。それほどまで極端で、徹底した人材戦略を採用しているんです。

ジェフ・ペゾスのヒト:ちょっとブラック?

ジェフ・ペゾスは社員に対して非常に厳しいリーダーとして知られています。
創業から20年あまりで売上高61,093百万ドルを超える企業に育て上げたカリスマ的リーダーの高い要求についていけず、会社を去る社員は後を絶ちません。

辞めた社員はみんなカルトから逃げてきた気分になるといいます。
「有能でなければジェフにズタボロにされ捨てられます。有能なら、もうダメというところまで働かされます。」
ある元社員はこんなことを言っています。

それくらいペゾスは社員に対して非常に厳しい要求や仕事を与えていたことはよく分かります。

彼に言わせれば「ワークライフバランスは嘘っぱちだ。」とのこと。現代の働き方に真っ向から対立する意見とも言えます。

創業者というのは、会社をスタートアップさせたころには、それこそ24時間、365日休みなく働いてワークライフバランスを犠牲にしてきたというのが普通です。アマゾン、とくにベゾス直属で働く社員はワークライフバランスを犠牲にしてきたんですね。

ジェフ・ペゾスのモノ:顧客第一主義

ペゾスは徹底した「顧客第一主義」を貫いており、ITが成しえる最大限のモノを事業に注入しました。

本のレビュー機能、レコメンデーション機能や、アマゾンマーケットプライス、アマゾン ウェブ サービス(AWS)など顧客がより便利により快適にウェブ上での取引を楽しむことができるサービス、機能を次々に開発しています。

ペゾスは大学卒業後にウォール街でIT部門に従事していた経験から、エンジニア上がりの経営者ですので、このようなITを駆使したイノベーションにはめっぽう強いんです。

また、商品を売って儲けているのではなく、買い物について顧客が判断するときの判断を助けることで儲けているんだ、と語っていることから、ペゾスはアマゾンを小売業者と位置づけていないことがよく分かります。

ジェフ・ペゾスのモノ:常識に縛られない

ジェフ・ベゾスは「アンストア(非商店)」という言葉を使うことがあります。アマゾンでは、これは小売業の常識に縛られることはないということを意味します。

アマゾンはみなさんもご存知の通り、顧客にウェブ上での仮想店舗を提供しオンラインで商品を売買できるサービスを提供しています。ウェブ上で販売する限り、棚スペースは無限であり新商品も中古品も揃っている、検索すればすぐに商品を見つけることができる、さらには、消費者個別におススメの商品を目の前に表示させることができます。

商品に対するポジティブな意見もネガティブな意見も自由に書き込むことができ、消費者は不特定多数の意見を参考に商品の購入を検討することができます。

このような購買スタイルは今では常識になりましたが、アマゾンが出てくるまでは考え付かないようなアイデアでした。

2007年11月に販売された電子書籍、キンドルも常識に縛られない発想から生まれた商品のひとつと言えるでしょう。

ベゾスはキンドルの書籍をすべて9.99ドル均一価格で販売すると独断で決定、発表をしました。実はアマゾンはこれよりも高い価格で仕入れていたため売れば売るほど赤字になるという状態だったといわれています。

それでも周囲の反対を押し切り9.99ドル販売を開始し、この電子書籍という新しい分野に対して記者会見の席で「本は未来永劫、死んだ木に印刷しなければならないなど、どこにも書かれていません。」とコメントしています。

「常識に縛られない発想が大切だ。」なんてきっと多くの人が色んなところで聞いている言葉でしょう。新鮮味がない言葉に感じられるかもしれませんが、ベゾスに限らず大成功を収めた人の多くはやはり常識に縛られない考え方をもっているものです。

ジェフ・ペゾスのモノ:宇宙事業

ジェフ・ベゾスは宇宙事業も手がけていることをご存知ですか。
彼の幼少時期の夢は宇宙飛行士。宇宙には人一倍の興味と想いがあり、高校生の頃にはお金持ちになって宇宙へ行きたい、と語っていたといいます。
2000年にロケット、ロケットエンジン製造を行う会社、ブルーオリジン社を立ち上げ、2011年、カーネギーメロン大学の講演で、「ブルーオリジンの目的は安価かつ安全に人間を宇宙へ連れていける技術を開発すること。」と語っています。

ベゾスはウォルト・ディズニーのように妄想を現実と、ビジネスのモノとしているんです。

ジェフ・ペゾスのカネ:社内の経費は節約する

ジェフ・ベゾスは社員が無駄な出費をしていないか厳しく経費に目を光らせています。
どんな上級幹部であっても出張する際の飛行機はエコノミークラスでビジネスクラスを使わせることはしません。社員が自腹を切ることも多く、「会社持ちじゃないからな。」がベゾスの口癖といわれています。

こんなエピソードがあります。
2003年のある朝、会議室に真新しいテレビが設置されていたことに腹を立てました。
新しいテレビを購入するとか聞いていないし、そもそも承認もしていない。「何だ、この無用な出費は!?」というわけです。すぐにテレビを外させてそれをイベントで使う賞品にしたそうです。

それ以来アマゾンでは、社内で無駄な出費や備品があった場合、それを見つけた社員に表彰しその備品を賞品として渡すというのが慣例となっています。

ジェフ・ペゾスのカネ:投資

そんな倹約家のベゾスですが、事業に関しては企業買収を中心にとても積極的に投資をしています。

アマゾンが軌道に乗り始めた1998年ごろから、映画データベースのIMDb、イギリスのウェブ書店のブックページズ、ドイツのウェブ書店のテレバッハ、インターネットショッピングモールのエクスチェンジドット・コムなど、あらゆる企業を世界中から買収しました。

緩やかに自分たちの身の丈にあった成長をする方法ではダメ、買収を繰り返してライバルに圧倒的な差を早くつける必要があるというベゾスの考えからです。

まとめ

【ジェフ・ペゾスのヒト】
優秀な人材を集めたり、他社から引き抜いたりすることに尽力し、彼らに対し、高いレベルの仕事を要求をする。社員からしてみれば非常に厳しい経営者と言えます。一方でそれでは社員はついて来ないことを理解し、優しく振舞う努力もしています。

【ジェフ・ペゾスのモノ】
「顧客第一主義」を貫き、顧客のためのイノベーションを推し進め新しいモノを次々に開発しています。
子供の頃から宇宙に対し強い興味を持ち、アマゾンの他、宇宙事業をも手がけています。

【ジェフ・ペゾスのカネ】
無駄を排除するために幹部、社員の贅沢を許しません。
一方で成長を加速させるため企業買収には惜しみなくお金を投資します。

(出典:『ジェフ・ベゾス~果てなき野望』 著:ブラッド・ストーン 訳:井口耕二 日系BP社刊 2014年)

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