もしもAmazonがMBAを提供するビジネススクールだったら
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ビジネススクールで提供しているMBAプログラムでは一体どんなスキルを身につけることができるのでしょうか?
「ビジネス全般を扱う経営学のスキル」
には間違いないですが、MBAではより実践的に学びます。
つまりMBAとは、教授の講義を聴くだけではなく、限られた期間内に多国籍のチームメートとディスカッションしたりリサーチしたりして、実践的に経営の基礎知識や国際感覚、コミュニケーション能力を身に付けるプログラムと言えます。
現在の職場で、海外の支店や取引先と常に英語でコミュニケーションをとり、かつ少人数のチームでプロジェクトを遂行していく機会に恵まれている人は、もう既にMBAさながらの経験をできているかもしれません。グローバル企業で実務経験を積んでいる人は、きっとこのような経験を既にしている人もいるでしょう。
たとえば、世界的なECサイト会社であるAmazon.com(アマゾン)に就職して、創業者であるジェフ・ベゾスの考え方を学び、数年で急成長した企業の文化に浸ることはMBAにも似た体験をできるかもしれません。
そこで今回は、「もしもAmazon.com(アマゾン)がMBAを提供するビジネススクールだったら?」という内容で、Amazon.comという企業を覗いてみます。
目次
出願インタビューは地頭を測るような問題が出題される
ビジネススクールでは、エッセイ、履歴書、成績証明書、推薦状などを提出し、その書類審査が通ると出願インタビューに招かれます。
出願インタビューでは通常、以下のようなことを聞かれます。
「なぜMBAを取得したいのか?」
「なぜうちのスクールを選んだのか?」
「中長期的なキャリア目標は?」
面接官は事前に提出されたエッセイ、履歴書、推薦状などを見ながら、出願者の経歴のほか、MBAに対する想いやコミュニケーション能力をみるんです。
もしもAmazonがビジネススクールだったら上記のような一般的な質問に加え、地頭を試すような「意地悪」な質問が出されることでしょう。
「カリフォルニアに犬は何匹いますか?」
「富士山をどうやって動かしますか?」
外資系経営コンサルティング会社などの入社面接では、このような大学教育などで身に付けた知識やスキルでない部分、つまり地頭を測る問題が出題されるといわれていますが、Amazonも同様です。
かつてジェフ・ベゾス本人が面接で「アメリカにガソリンスタンドはいくつありますか?」など入社志望者へ出してその人の地頭の良さを測っていました。
(出典:『ジェフ・ベゾス~果てなき野望』 著:ブラッド・ストーン 訳:井口耕二 日系BP社刊 2014年 60ページ)
Amazonでは常に優秀な社員を採用したり他社から引き抜いたりして、社内の人材を充実させてきました。ベゾス自身こんなことを言っています。
「誰かを雇ったらその人を基準に次はもっと優れた人を雇う。そうすれば人的資源が全体的によくなってくる。」
(出典:『ジェフ・ベゾス~果てなき野望』 著:ブラッド・ストーン 訳:井口耕二 日系BP社刊 2014年 60ページ)
ですので、Amazon.comに入社するのもそこで出世するのも本当に大変なんです。
もしもAmazonがビジネススクールだったら、出願インタビューの難易度が話題になるのかもしれません。
講義ではパワーポイントを使わない
MBAの一般的な講義では、教授が教室のスクリーンにパワーポイントを映し出して、前半はその日のシラバスに沿って経営理論の説明をしたり事例を紹介したりします。そして講義の後半は、学生を交えたディスカッション形式へと移ります。
Amazon社内でも、ディスカッションを通じてアイデアを生み出すことを推奨されます。
「社内でアイデアが育まれるプロセスというのは意外にぐちゃぐちゃなもので、頭に電球がともる瞬間ではありません。」
(出典:『ジェフ・ベゾス~果てなき野望』 著:ブラッド・ストーン 訳:井口耕二 日系BP社刊 2014年 18ページ)
このように言うベゾスは、Amazonの会議ではパワーポイントは使いません。代わりに6ページの意見書を作成し、参加者がそれを黙読した後にディスカッションをする、というスタイルをとっています。
もしもAmazonがビジネススクールだったら、MBAの講義ではパワーポイントは使わずディスカッション中心の講義になるかもしれません。
テキストはサム・ウォルトン自伝
ジェフ・ベゾスは大学卒業後、ITエンジニアとして働き、1995年にAmazonを創業しました。
起業するまでに各方面での豊富な経営経験があったわけではありません。
では、彼はその経営スキルをどこでどうやって習得したのでしょうか。
それは徹底的に他人からノウハウを盗むことで習得してきたんです。
Amazonのスタートアップを一緒に立ち上げたハルシー・マイナー氏はこう言います。
「ベゾスは誰からでも学ぼうとする。彼がなにも学ばなかった人などいないと思う。」
(出典:『ジェフ・ベゾス~果てなき野望』 著:ブラッド・ストーン 訳:井口耕二 日系BP社刊 2014年)
そんなベゾスが経営において、最も参考にした経営者のひとりにウォルマートの創業者、サム・ウォルトンがいます。
サム・ウォルトン自伝「私のウォルマート商法~すべて小さく考える」を経営のテキストとして彼はこの本から大変多くのことを学んでいます。この本を参考にベゾスはサム・ウォルトンの考えを吸収し、行動重視の考えをAmazonの企業文化に染み込ませているんです。
Amazon幹部にもこの本をプレゼントするなど、ペゾスが如何にこの本の信者であるかがよく分かります。
もしもAmazonがビジネススクールだったら、経営のテキストはサム・ウォルトン自伝だったかもしれません。
「ジェフェズム」を伝承したMBA講義
どこのスクールでもMBAプログラムは必須科目と選択科目で構成されています。
必須科目ではマーケティング、経営戦略、ファイナンス、アカウンティングなどのビジネス各分野の基礎を学びます。選択科目では、学生が目指すキャリアによってマーケティング専攻、ファイナンス専攻などに分けられ、それに応じた科目を履修することになります。
もしもAmazonがビジネススクールだったら、ジェフェズム専攻コースがあるかもしれません。
Amazonではジェフ・ベゾスが繰り返し繰り返し口にする言葉を「ジェフェズム」と言います。その「ジェフェズム」にもなっているのが、「顧客第一」「長期的視野」「創意工夫」です。
ジェフェズム専攻コースでは、この3つの精神を徹底的に学びAmazon流経営ノウハウを身につけることができるでしょう。
まず、「顧客第一」についてベゾスはこんなことを言っています。
「他社の心配などするな。他社が我々にお金をもたらしてくれることなど、いずれにしてもないのだから。考えるべきは顧客だ。」
(出典:『ジェフ・ベゾス~果てなき野望』 著:ブラッド・ストーン 訳:井口耕二 日系BP社刊 2014年 82ページ)
そしてこんなことも、、
「ライバルを気にするか、顧客を気にするかを選べといわれれば、我々は常に顧客を気にするほうを選びます。ライバルがしていることに注意を払いますが、我々がエネルギーを注ぐのはそこではありません。」
(出典:『ジェフ・ベゾス~果てなき野望』 著:ブラッド・ストーン 訳:井口耕二 日系BP社刊 2014年 379ページ)
徹底的な顧客視点に立ったマーケティングや経営戦略を学ぶことになりそうですね。
「長期的視野」もAmazonの特徴です。
ベゾスは何か新しいモノに投資するときは常に長期的展望を優先します。2、3年赤字を出してもそれが10年後、20年後に備えた種まき期間だととらえ、実が熟すまで辛抱強く待ちます。
「創意工夫」についてベゾスは世界的に大きな影響を持つのハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授の著書「イノベーションのジレンマ」の影響を大きく受けています。なにしろ、この本に書かれているノウハウを忠実に守り、電子書籍キンドルを誕生させてているんです。
ベゾスは他人から多くを学びますが、それをただ単に真似をするのではなく、自分なりの経営スタイルに形を変えて創意工夫をすることでビジネスに適用しています。そして、社員にはイノベーションをおこすための開発を推奨しています。
ベゾスは愛される企業の条件としてあげている以下3つからもそれは分かります。
「愛される企業とは、愛想がよくて頼りになること。創意工夫をすること。征服者ではなく探検者として見られること。」
(出典:『ジェフ・ベゾス~果てなき野望』 著:ブラッド・ストーン 訳:井口耕二 日系BP社刊 2014年 441ページ)
創意工夫をしてさらに開発精神を持つことを重要視していることが分かりますね。
もしもAmazonがビジネススクールだったらこのような「ジェフェズム」を伝承したMBA講義だったかもしれません。
まとめ
もしもAmazon.com(アマゾン)がビジネススクールだったら
■出願インタビューは地頭を測るような問題が出題されます。
■講義ではパワーポイントを使いません。
■テキストはサム・ウォルトン自伝です。
■「ジェフェズム」を伝承したMBA講義になります。
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