GEのジャック・ウェルチから学ぶMBAリーダーシップ論
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先日、GE(ゼネラル・エレクトリック)社の元会長兼CEOジャック・ウェルチ氏が84歳でお亡くなりになりました。
今回はジャック・ウェルチ氏のリーダーシップ論についてのお話です。
ビジネススクールの入学審査官と会食をする機会がよくあるのですが、その際にMBA出願者に求める能力としてよく出てくるのが、「リーダーシップ」です。
MBAを目指し、将来、企業の経営者や経営幹部になるような人たちは、様々なタイプの従業員を率いて、組織として高い利益を出すのが大きな役割となります。
従業員一人ひとりに会社が掲げる目標や理念を十分に理解してもらい、それぞれの分野で高い能力を発揮してもらうためには、経営者や経営幹部の能力が必要になってきます。リーダーシップがなければ、従業員は自分達が進むべき道が分からなくなり、全員が違う方向に向かって歩きだしてしまう、という事態になってしまいます。
MBAを取得し、将来、会社経営に関わっていくような人材は、リーダーシップ能力を身につけることは必須であり、その能力身につけない限りは会社を継続的に経営していくことは大変難しいでしょう。
そこで今回は、世界的カリスマ経営者であるGE(ゼネラル・エレクトリック)社の元会長兼CEOジャック・ウェルチ氏からそのヒントをもらいましょう。
彼の自伝書である「ジャック・ウェルチ わが経営上・下」(著者:ジャック・ウェルチ、翻訳:宮本喜一)から、従業員30人万~40万人を有する超巨大企業で21年間も会長兼CEOとして率いたジャック・ウェルチの強烈なリーダーシップを見ることができます。
目次
人に自信をつけさせることがリーダーの大事な仕事だ
「ジャック・ウェルチ わが経営上」(著者:ジャック・ウェルチ、翻訳:宮本喜一)p28
ジャック・ウェルチの強力なリーダーシップは、幼少の頃から厳しくも優しく接してくれた母親からの影響がとても強いです。
ジャック・ウェルチは、「母親は、厳しい時もあったがときには褒めてくれる。それにより、自分が自信をつけることができた。」と述べています。
自信があれば、大きなことに挑戦し、それに責任を持ってリスクを負えるようになり、できると思わなかった夢も実現させることができる。
自信には、そのような力があり、リーダーの大切な仕事は、人に自信をつけさせる事である、とジャック・ウェルチは考えています。
人員の削減ほどつらい決断はない
「ジャック・ウェルチ わが経営上」(著者:ジャック・ウェルチ、翻訳:宮本喜一)p223
曰く「いつの時代にも経営者にとって人員の削減ほどつらい決断はないだろう。『人員の削減を楽しむ』人間や、『削減に踏み切れない』人間は、会社を経営するべきではないだろう。」
ジャック・ウェルチは、正式に人を解雇する前に2度や3度の名誉挽回のチャンスを与えていた、と述べています。その名誉挽回のチャンスをものにすることができれば、GEに残ることができ、日々の業務に励むことで、またそれも大きな自信につながります。
会社が組織として利益を上げていくためには、時として辛い決断が必要であり、それができないリーダーは社員とともに海の底に沈んでしまうんですね。
入社して10年経つまでGEの会長が誰なのか知らなかった
「ジャック・ウェルチ わが経営上」(著者:ジャック・ウェルチ、翻訳:宮本喜一)p287
ジャック・ウェルチは1981年に会長兼CEOになって以来、マネージャーに対して、常に自分と同じ情熱を持つように話しています。これもリーダーとしてとても大切な役割です。
大企業になると、組織の下の人間にとって、会長に直接会うこともなければ、話しをする機会などほとんど皆無でしょう。
いくら会長が、会社のあるべき姿を熱心に社内報で伝えたところで、末端の社員にしてみれば、朝直属の上司に指示されたデータ入力の方が大事なのです。その社員にしてみれば、直属の上司こそが自分の出世を左右するキーパーソンであり、上司を喜ばせるために仕事をしているようなものです。
ジャック・ウェルチは、その事実を知っていたのでしょう。
「入社して10年経つまで、 GEの会長が誰なのか全く知らなかった。」この言葉からは、下っ端の社員にとって、会長の存在自体はそれほど重要ではない、という声が聞こえてきます。
重要なのは、マネージャーレベルの社員が、自分の部下に対して、会長の思想やメッセージをしっかりと伝えていることなのです。
そこでジャック・ウェルチは、マネージャーに対して自分と同じ情熱を持つように、部下に対してその気持ちでコミュニケーションをとるように、常に言い聞かせてきました。
そうすることでジャック・ウェルチの思想は、巨大組織の底まで行き渡るようになっていったのです。
リーダーシップを持つ経営者は、自分の思想や考えを、組織の隅から隅まで行き渡るような努力をしています。
リーダーシップ能力のない経営者はこれをすることができません。リーダーシップのない経営者のもとでは、隅々まで会社の考えが行き渡っていないため、会社分裂し組織として高いパフォーマンスを上げることができないのです。
境界がないこと(バウンダリレス)
「ジャック・ウェルチ わが経営上」(著者:ジャック・ウェルチ、翻訳:宮本喜一)p314
ジャック・ウェルチが20年間GEのトップとして会社の経営に関わってきた中で、彼が科学的なブレークスルーのように感じられた、と言ったのがこの「境界がないこと(バウンダリレス)」です。
ジャック・ウェルチは、組織内において、設計、製造、マーケティングなどの部門間の壁がないこと、そして人種や性別の壁のないことをGE全体に行き渡るように常に発信し続けていました。
GEほどの巨大企業になれば、社員は自分の所属する事業のことだけを考え、保身に走ろうとするものです。ジャック・ウェルチは、そこにメスを入れ、境界線のない組織改革を目指しました。
そして、そのアイデアに共有することができない社員はクビにすると言う厳しい処置も取りました。
境界のない企業は、他社のアイデアを活発に採用し、それを自分たちのものにします。
優れたアイデアを提案した社員だけでなく、そのアイデアを発展させた社員にも報酬が与えられるシステムがあれば、一部の事業部がアイデアを独り占めすることなく、積極的にアイデアを提案すうようになります。
上司も部下も関係ありません。
ジャック・ウェルチは、その強力なリーダーシップで境界のない組織作りをしました。
私のGEでの仕事はヒトとカネをやりくりすることだ
「ジャック・ウェルチ わが経営下」(著者:ジャック・ウェルチ、翻訳:宮本喜一)p85
ジャック・ウェルチは、ジェットエンジン事業、医療機器事業、テレビ放送事業、金融事業など様々な分野の経営に関わってきました。彼はジェットエンジンも医療機器も作ることはできません。彼ができるのは、ヒトとカネをやりくりすることであり、彼はそれに特化していました。
リーダーシップのある経営者は自分一人ですべてのやろうとしません。
自分一人でやろうとする経営者は、大概の場合、キャパが頭打ちとなり成長が止まってしまいます。リーダー仕事は、自分ができるようになるのではなく、出来る人を外部から連れてきて、それをやり繰りするのです。
MBAでマーケティングや会計、ファイナンスなど様々な分野で学ぶと全て自分一人でできてしまうかのような錯覚に陥ります。
しかし、優秀なリーダーとは、それらの全ての分野に精通している人材を指すのではありません。それらに精通している人材を見つけ、限られた資金のもとやり繰りする能力なのです。
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